web小説 月下の白刃①
月下の白刃
「……っ!!篤郎!!」
「……」
「篤郎……一体……」
「俺だよ……」
「っ!!に、兄さ…!……その血……」
「だから俺がやった……篤郎を殺したのは……里の皆を殺したのはこの俺だ。」
「な…ぜ……何故!」
「自分の強さを知る為に。」
「……え?…そん…な…事の……為に?そんな事の為に皆を……弟である篤郎をも殺したのですか!?」
「俺達が持つ《これ》はその為にあるのだと思わないか?相手を切り殺す以外、《これ》が何の役に立つ?」
「それは心がけ一つでしょう……。」
「……そうか。やはりお前とは相容れぬか。まぁいい。後はお前だけだ。篤郎の元へと逝くがいい。」
「……」
「ふ、その目……さっきの台詞は撤回だ。やはりお前は《こちら側》の存在だ。《そちら側》ではさぞかし窮屈だったであろう。」
「黙れ……」
「恥じる必要はない。それ以上自分を抑える必要もない。」
「黙れ!」
「《これ》を持つ以上、我々はこうなる事が当たり前なのだ。言わばこれが我々の宿命。」
「黙れぇぇぇぇぇ!!」
二匹の獣が月光に重なり、新たな悲劇が幕を開けた……。
人知れず……そう、誰もいない森の奥でそっと……。