久々投稿。トーラム日記。火力銃盾
見出しの通り火力銃盾パラに挑戦。
コンセプトは壁ではなくあくまでソロ火力パラである事。
自動弓の火力最強パラはどう頑張っても銃矢ですので、これはどう考えても自己満足でしかありませんので、その辺を踏まえた上でお読み頂けると幸いです。
私は長年銃ナイフに拘っていたので、神速を使うことを前提にして、防具軽量化で敵の攻撃をavoidしながら戦って来ていましたが、はっきり言って私のPSはかなり低いです(T_T)
すぐ死んじゃうので、パテ組むのも申し訳なくて基本ぼっちプレイですし、そのぼっちプレイでもすぐ死ぬので、イベントなんかでもやり込みなんて出来ません。
という訳で、神速は使わず、それなりの耐久性を持たせて多少の被弾には目を瞑り、死ぬ回数を極力減らしていこうってのが今回のパラになります。
盾を持たせたのはガードとPDを上手く使って死に難くする為です。
まずはステに関してですが、以下の通り
Lvが中途半端なのはまだ育成途中だからなので気にしないでね。
安定率の関係でステはD極Sです。
盾装備ですので、ファーレスの性能やシルキャのダメージ量の事を考えるとD極Vもありかと思いますが、ダメージソースは基本的にシュートスキルで考えてますので、この場合はD極Sがマストだと思います。
装備に関しては以下の通り。
鍛冶屋品&ドロ縛りプレイしてるんで、今のところ一番汎用性が高い7周年の祝弓銃を使ってます。クリスタがバルター止まりなのは、ご愛嬌。マダンゴは銃ナイフパラで物理貫通アゲアゲしてた装備を流用してるからです。
サブは勿論盾です。悪霊魚の盾使ってます。DEX上がる上、物理貫通、攻撃速度が上がる優れ物。今回は壁用ではなく、あくまで火力型銃盾ですのでこちらを採用させていただきました。
防具は今回初めて重量化してみました。こちらはプロパ付けてます。そして少しでもdef上げるため、初めて防具(ついでに盾も)をSまで上げました。ホント、精錬楽になって良かったよ。クリスタはhpのことも考えてDX付けてます。これにhp飯食べてスキルでhpupを取らなくても済むようにしてます。
追加はトーメントとどっちにするか迷ったけど、少しでも火力を上げるため、レースヘッドドレスを採用。今後これもS精錬する予定。クリスタは適当。
追加は適当。輝く海のお守りの2穴があればそっちでロンとヴェーネ刺すのが理想だね。金無いから無理だけど。
スキルは以下の通り(基本Lv10のみ記載)
◎シュートスキル
クロス10
ツイン10
コンク10
マスタリ10
ロング10
クイック10
デコイ10
◎シールドスキル
マスタリ10
バッシュ&シルキャ10
ストライク10
フォース&マジカル10
プロテクション&イージス10
◎ナイトスキル
PD10
ファーレス10
◎プリーストスキル
グロリア10
◎バトルスキル
攻撃力up&クリ&脅威10
(守備力up&守備の心得も取得予定)
◎モノノフスキル
縮地1
怪力10
◎ガードスキル
重防具マスタリ10
アドバンスガード10
(フィジカルガードも取得予定)
だいたいこんな感じ。プロテクションとイージスは間違って取った。この2つって自分には効果無いみたいなんで、スキリセ来たら消すつもり。離れて戦うからバッシュも5止めで良さげ。
Vに振ってないからシールドストライクとかファーレスとかも要らないかも。でも、ファーレスってツインと相性良さげなんだよね。悩みどころ。
メイン火力はコンク&クロス。ツインで通常慣れ稼ぎながらコンクとクロスをブッパする。シルキャがサブ火力かな?
今後はスキポが余ったらパラボラキャノンも使いたいな。評判悪いけど。
今までは敵の攻撃を避け切れずに被弾して死ぬことが多かったんたけど、このパラにしてから死に難くなった。全く死なない訳ではないけど。
プレイヤースキルが低い私には、丁度よいパラに仕上がりそうです。
web小説 月下の白刃⑯
「おはよう堤下L。」
「おせーぞ手下L!」
「お早う御座います堤下Lさん♪」
「堤下Lさん!この間の領収書の事ですが……」
「堤下L!」
「手下L!」
「て~し~た~Lぅぅぅぅぅ!」
「堤下Lさ~ん♪」
「……」
翌日、誰もいない冷たいベッドで独り目覚め、トボトボと会社に出社した俺を待っていたのは、会う人全員が口にする『L』のオンパレード……なんすか『L』って……。
「堤下Lさん♪男爵……じゃなくて社長が及びですよ?」
「あ、あの……」
「何でしょうか?堤下Lさん♪」
「……その……『L』ってなんすか?」
「はい?何言ってるんですか♪『L』はロンリーロリータ堤下栄さんの新しいコードネームじゃないですか♪ロンリーの『L』♪ロリータの『L』♪」
「はぁ??」
「……はい♪」
にこやかに手渡された携帯の画面に写っていたのは……
「だぁぁぁぁぁ!何すかこれはぁぁぁぁぁ!!」
携帯に写っていたのは……俺の胸に顔を埋める樹里の画像と、俺の想い人が実は変装した金城さんだった事を知ってうなだれている俺の姿だったっすぅぅぅぅぅ!!
……一体いつの間に撮ったっすか?
「あ、手下L、遅いわよ。もう樹ちゃんの紹介、粗方終わったわよ?」
そう言って現れたのは、にこやかに微笑む樹里と、おそらくはこの騒ぎの現況……全世界の敵・猫女・金城美依その人だったっす!
「金城さん!何すかこれは!!」
「何?あ、これ?よく撮れてるでしょ?あんまりにもよく撮れてるから、うちの社員全員に送ってあげちゃった♪」
「な……何やってるっすかあんたはぁぁぁぁぁ!!」
「手下Lの分際で私のやりようにケチ付けるっての?」
クッ……
「こ、これはプライバシーの侵害っす!これじゃあ、樹里だって可哀想っす!!樹里は未成年なんすよ?!樹里!君も笑ってないで、この馬……この人になんか言ってやるっす!」
「え?……だって……これであたしと栄の仲は公認されたわけだし……」
顔を赤く染め、両手を頬に当てて照れる樹里。
「ほら♪樹ちゃんは私に感謝してるわよ♪」
「俺が困るんす!大体俺と樹里はそんな仲じゃ……」
「『樹』よ。」
「……ない……へ?」
「彼女の名前は『折原樹』よ。明日にでもそれで戸籍を作り直すから、今後は彼女の事は『樹』と呼ぶように。」
突然真顔になって、そう俺に注意してくる金城さん。
「は、はい……」
樹里……いや、樹の方に視線を向けると、決意を込めた瞳で頷き返してきたっす。
「じゃ、そう言うことだから。樹、行くわよ。」
「はい!……栄、また後でね♪」
そう言ってきびきびとした歩調で離れていく2人……そうっすか……樹里……君は全てを受け入れると決心したんすね……ってオイ!話はまだ済んでいないっすよ!!
このままじゃ全社員に、誤解されてしまうっす!!
そして俺は慌てて2人を追いかけたのだったっす。
時すでに遅しだったのは言うまでもない事っす……俺はその後、組織はおろか、取引先の人間にまで『L』のレッテルを貼られたのだったっす……。
fin
web小説 月下の白刃⑮
ふわふわと海の中に漂ってるかのようなこの感覚……
薄暗いっすがぼんやりと温かい、明るい闇に覆われいるかのようなこの視界……
俺はまた夢を見てるっすね……
全身を覆うこの気だるい倦怠感……でもそれは、決して不快な感覚ではないのだったっす……。
その海の底にでもいるかのような感覚に身を委ねていると、突然右手がふんわりと、温かい何かに包み込まれたっす。
その右手は、やがて柔らかな何かにそっと当てられ、ギュッと押さえつけられたっす。
「……」
手のひら全体にトクトクと伝わる振動と温もりが心地いいっす……。
しかし、その心地よい感触の中心部では小さなシコリが自己を主張しており、その感触に俺は無意識の内に右手をズラして指先でそのシコリに軽く触れたのだったっす。
「…………っ!!」
触れた瞬間は柘榴の果肉ぐらいだったそのシコリは、俺が感触を確かめている間に、ついには若いブルーベリーの実の様に堅く大きく変化していったのだったっす。
「っ!!……ん……」
指先から感じる鼓動は早く鋭くなっていき、温もりは徐々にその温度を上げていったっす。
「…んあ……」
耳に流れ込む艶のある甘い吐息は、俺の心を徐々に熱くさせ………ん??
鼓動?……吐息??
……ま、まさか……。
―ペタペタ―
「あん♪」
ダァァァァァ!!
―ガバッ―
「キャ!」
「樹里!一体何やってるっすかぁぁぁぁぁ!!」
俺はまさかの展開に慌てて起き上がると、素っ裸で俺の右手を自分の胸に押し当てていた樹里に向かってそう怒鳴ったっす!
「何って……ナニ?」
いきなり目覚めた俺に大して驚いた様子も見せず、樹里は俺の詰問に小首を傾げてそう答えたっす!
「"ナニ"じゃないっすよぉぉぉぉぉ!昨日、俺が言ったこと、忘れたんすかっ!!」
そう言いながら、俺は昨日のあの戦いの後の事を思い起こしていたっす。
昨日の風陀羅とのあの戦いの後、さすがに魔力が尽きた俺は、樹里を連れてなんとか自宅であるマンションまでなんとかたどり着くと、その後はベッドに倒れ込んで泥の中のムツゴロウが如く深い眠りについたのだったっす。
只、その時一緒にベッドに入ろうとした樹里に、俺の替えのパジャマを渡して着替えさせ『昨日みたいな変な気は起こさないように!』とキツく言い含め、頷いたのを確認してからようやく眠りについたはずだったっす。
そうっす!俺は間違いなく言ったはずっす!だからこれは俺の意志と関係ない出来事なんすよぉぉぉぉぉ!
「栄は……あたしとじゃ……いや?」
俺の苦悩はお構いなしに、樹里はにっこり笑ってそう誘いを掛けてきたっす!
「イヤとかイヤじゃないとかそう言う事じゃなくってぇ!樹里はまだ小6くらいのはずっすよね?!まだそんな事に身を任せるには時期が早すぎるっす!!」
俺の魂の叫びに、樹里はぷうっと頬を膨らませると、やや不満そうに口を開いたっす。
「……小6じゃなくて中1だもん……」
「どっちにしろ早すぎるっすぅぅぅぅぅ!!」
この俺に青少年保護条例に引っかかれと?
「……大丈夫……体は確かに12歳だけど……中身は"樹"であった時を加えると……ほら、栄よりずっと年上だわ♪」
「……"樹"であった時?」
「そうよ……」
疑問を孕んだ俺の言葉に、樹里は右手を手のひらを下にして差し出すと、その手のひらに"気"を込めながら喋り始めたっす。
「今のあたしは……」
ぼおっと青白く光を放ち始める樹里の手のひら……
「『折原樹里』であると同時に……」
その光はゆっくりと中心に向かって集まっていくっす……。
「『鎌鼬の樹』でもあるわ。」
青白いその光はやがて物質化を果たし、大きく湾曲した一本の白刃へと変貌を遂げたっす。
「勿論……完全な『樹』とまではいかないけど……でも間違いなく今のあたしはあの日のあたしよ?あたしは『折原樹里』であり『樹』なの……だから大丈夫。」
そう言って樹里が幼い顔に浮かべたその微笑は、確かに年相応の物とはいえず、奇妙な色気を醸し出しているっす。
でも……
「ダメな物はダメっす!!」
俺は大人の威厳を込めてそう言い放ったのだったっす!
……時間にして五秒ほどの間。
「……ヤッパリ不能?」
「ちがぁぁぁぁぁあうすぅぅぅぅぅ!!」
なんでそうなるっすかぁぁぁぁぁ!!
「……よね?」
クスリと笑ってそう言った樹里の視線の先には……
「……っ!こ、こここここれは只の生理現象っす!け、決してそんなやましいことは……ってなんで俺、裸なんすかぁぁぁぁぁ!!」
「クス……そんなに慌てて否定しなくても……あ…裸なのはあたしが脱がしたからよ?傷がまだ結構残ってたから……」
そう言いながら、おそらくは鎌鼬の特殊能力で作り出したのであろう薬壺を俺に見せながら、樹里は淫靡な笑みを浮かべてにじり寄って来たっす!
そんな樹里に本能的な恐怖を感じつつも何とか理性を保つと、頭を振ってその誘惑を振り切り、俺は指を差して言ってやったっす!
「だいたい俺は……巨乳マニアなんすよぉぉぉぉぉ!!Aカップなんて問題外っすぅぅぅぅぅ!!」
ガァァァァァン……ってな感じで樹里は後ずさると、涙を浮かべて悔しそうに両手を布団に突いたっす。
「ふっふっふ……分かったっすか?俺と樹里は決して相容れな……」
「……んで……」
「……い……ん?何すか?」
「揉んで……」
「は?」
俯いて、肩を震わせ語ったその台詞に、俺は我ながら間の抜けてるなぁと思う顔で返事を返してしまったっす……今、何て言ったっすか?……揉…ん……で?
はぁ?!
「な……なっなななななな何言ってるっすかぁぁぁぁぁ!!」
「だから揉んでって言ってるの!揉まれればあたしの胸だってきっと大きくなるんだから!」
「アホっすか?!んなこと出来るわけないっすよぉぉぉぉぉ!!」
「何で?!だって栄は巨乳じゃなきゃ嫌なんでしょ?!だったらあたしに協力してよ!!」
「そもそも何で、俺と樹里が結ばれる前提で話が進むっすか?!俺は何度も断ってるっすよね!?」
「……家の家訓……押してだめなら……押しまくれぇぇぇぇぇ!掴んだ男(えもの)は死んでも離すなぁぁぁぁぁ!!」
「何すかそれはぁぁぁぁぁ!」
そう言って襲いかかってくる樹里に、死に物狂いでそれを抑える俺!
「だぁぁぁぁぁ!どこ触ってるっすかぁぁぁぁぁ!!」
「……ナニ?」
「んなもん触るなっすぅぅぅぅぅ!!」
「……好きなくせに……」
「な、何すかその目は?!そんな台詞どこで覚えたっすかぁぁぁぁぁ!!」
「……お母さん。」
「だぁぁぁぁぁ!何つう母親っすか!?」
「素敵なお母さんだった……」
「い、いやまぁそうかもしれないっすが……」
突然切なげな瞳で遠くを見つめる樹里に、俺は慌てて口を噤んだっす……。
「……お願い、栄……あたしはあなたじゃなきや嫌なの!」
キラリと樹里の目尻に光る涙の滴。
「い、いやそれとこれとは……」
ん?
「あたしってそんなに魅力ない?!あたしじゃだめなの?!」
「……樹里……そう言うことは、きちんと目薬を隠してから言おうね。」
「……チッ。」
「『チッ』ってなんすか?!『チッ』って!!……とにかくだめなもんはダメっす!」
―ガバッ―
「いや!あたしは栄としたいの!」
「ちょ、ちょっと樹里!は、離れるっす!!」
「いや!抱いてくれるまで離さない!!」
「い、いや…だから……」
「あたしは栄がいいの……」
「そんな事言っても……」
「栄はそんなにあたしのことが嫌いなの?!」
「い、いや…そう言う問題じゃなくて……」
「あたしは栄が好き……」
耳まで真っ赤になって、俺の胸に顔を埋める樹里は確かにこの上もなく可愛いのっす……。
「樹里……君の気持ちは嬉しいっすが……」
「じゃあ……」
「い、いやだから……」
―ピシ―
「……それとこれ……へ?『ピシ』?」
―ドガッ―
「いい加減に、するのかしないのかハッキリしやがれ手下Aィィィィィ!!」
そう叫びつつ天井裏を蹴破って登場したのは、猫女の金城さんだったっす!
天井裏から飛び降りて来た金城さんは、空中で見事な弧を描き出しながら回し蹴りを放ってきたっす!
「んがぁぁぁぁぁ!なんで金城さんが家の天井裏にいるっすかぁぁぁぁぁ!!」
その回し蹴りをまともに喰らい、吹き飛ばされながらそう抗議の声を上げる俺ぇぇぇぇぇ!!
「あんたらイライラすんのよ!するのかしないのかハッキリしろぉぉぉぉぉ!!」
―スタッ―
「いや、美依さんが乱入しなけりゃそのままやり始めたんじゃない?良かったなぁ堤下。俺らが乱入したお陰で警察のご用に済んだじゃないか。」
華麗に床に降り立って至極もっとも(らしき)な意見を口にしたのは、言わずと知れた水無月の兄貴っす。
一見すると、俺の事を気遣ってくれているような台詞っすが……そんな残念そうな顔で言ったら台無しっすよ!!
「んなことより……なんで二人がうちの天井裏にいるっすかぁぁぁぁぁ!」
床に打ち据えたおでこを押さえながら、俺は当然といえば当然の疑問を投げかけたっす!
「なんでって……ねえ?」
「そうよ!勿論、あんた達が無事に戻ってこれるか心配してずっと待ってたのよ!」
「……それで待ってる間に酒盛りが始まって、いつもの流れでやっちゃったと……」
「その通り!」
えばって言うなぁぁぁぁぁ!
「そういうことは自分ちでやれっすよぉぉぉぉぉ!」
「いや、ほら今うちら部屋追い出されて宿ナシだし。」
「そう!俗に言うホームレス!!」
だから威張ってどうするっすか……。
うなだれていると、兄貴がさらに追い打ちをかけたっす。
「ほら、ここって酒の種類が豊富だし、ヘタな飲み屋に行くよりも、美味いツマミもそろってるし。会社じゃ気分でないし、ホテルじゃ金かかるし。」
「その通り!!」
二人の様子にはっとして振り返ると……乱立している幾本もの酒瓶が……。
「あぁぁぁぁぁ!俺の秘蔵のワインとウィスキーがぁぁぁぁぁ!!あぁぁぁぁぁ!こっちはイタリアから取り寄せた極上生のハム……チーズとサラミまで無くなってるすぅぅぅぅぅ!!」
あんたら、これ揃えるのに一体いくら掛かったと思ってるすか……。
「ま、すべてが丸く治まったみたいで何より。お邪魔みたいだし俺らはこの辺で失礼するよ。」
「その通り!!」
そう言って、2人は玄関に向かって歩き始めたっす…………ふふふ……ふふふふふ……ふはははははははは!!
こうなったら、報復覚悟でこの2人の仲に、新たな火種をまき散らしてやるっす!
「待つっす2人とも!」
俺の言葉に、怪訝な顔で振り向く2人。
「樹里……実は、俺が君を受け入れられない理由はもう一つあるんすよ……」
「……」
「実は俺には想い人がいるっす。」
「っ!!」
「俺の心にその人がいる内は、俺には樹里の想いを受け止める資格はないっす……。」
「……」
「兄貴……」
「なんだ?お前の好きな相手って俺だったのか?悪いが俺は化け猫に取り憑かれておりましてねぇ……」
「その通り!!」
「……違うっす。」
「……?」
いつもと違った俺の反応に、兄貴は戸惑いの表情を浮かべているっす。
……ふふふ……いつも取り澄ましているその表情……今日こそ真っ青に染めてやるっす!
「俺は、合コンの時に『兄貴と一緒』にいつもホテル街へと消えていく、あのメガネの巨乳な帽子の女性が好きなんす!それはもうこの胸はちきれんばかりに……兄貴!今日と言う今日は、あの娘の名前と電話番号をこの俺に教えて欲しいっす!」
「そんな事俺に聞かんでも、ほれそこに本人がいるから自分で聞いてみれば?」
そう言って指し示た指の先には、大きめの丸い銀縁眼鏡を掛けて、大きめの帽子を深めに被った、合コンの時のあの女性が確かにそこに……へ?
そこにはさっきまで金城さんが居たはずでは?
俺が唖然と視線を向けていると、彼女は突然ガバッと帽子と眼鏡を取り外し、にっこりと笑顔を浮かべて喋り始めたっす。
「いや~まさか栄ちゃんの想い人があたくしであったなんて、想像もしておりませんでしたわ♪おほほほほ~♪」
……へ?あなたは金城さん?……へ?
「なにいつまでも呆けてるのよ。あんたって、ホント洞察力が足りないわよね~。」
「へ?…だ、だって……」
「『だって』なによ?」
「だって……あの胸……」
「……嫌なところを突っ込むわね……作り物に決まってるでしょ?」
「え?……胸……」
―ペタペタ―
「いやん♪……って何言わせるか!!」
「胸……巨乳……」
「い、いや……そんな両手を突いて愕然としなくとも……」
「まぁ巨乳マニアを自認していた割にはお粗末な観察眼であることは確かだな。」
あ゛……あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛………
「……まぁ傷心の堤下君はほっとくとして、僕らはそろそろ会社に戻りましょうか?」
「そうね。あたくしがこれ以上この場に留まったら、傷心の堤下君の傷口に塩を擦り込むことになりかねないしね。」
あ゛……あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛………
「それじゃぁな。ロンリー堤下……略して堤下L。」
「更に言うならロリータ堤下……これからは手下Lと呼ばせてもらうわ。」
―スタスタスタ……―
あ゛……あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛………
―ポン―
「栄にはあたしがいるから安心してね♪」
あ゛……あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛……あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛………
web小説 月下の白刃⑭
俺の放った『巨人の聖鎚(トールハンマー)』をまともに喰らい、風陀羅は息も絶え絶えで倒れているっす。
命を失わずに耐え凌いだのはさすがっすが、もう戦う力が残っていないのは一目瞭然だったっす。
俺の身体もさすがにダメージが深かったっすが、『金剛壁』のお陰で致命傷には至っていないっす。右肩のダメージはまだまだっすが、残りの傷はその大部分が塞がっているっす。ただ、失われた血液までは戻る筈もなく、貧血で立っているのも辛い状況ではあるっすが。
俺はトドメを刺すべく、ナイフを握り直して風陀羅のもとへと足を進めたっす。
―ザッザッ―
風陀羅のもとまで後少し……と言うところで俺の前に立ち塞がる人影が一つ。
「樹里?……どうしたっすか?」
泣きそうな顔でこちらを見つめている樹里。
「栄……あたしのせいで……」
「樹里のせいじゃないっすよ。術者として生きている以上、これくらいは覚悟の上っす。」
「……」
「さぁ樹里……そこを退くっす。ここで止めを刺しておかなかったら、元の木阿弥っす。」
「……だめ。」
ブンブンと首を振り、俺の言葉に拒否をする樹里。
「樹里……気持ちは分かるっすが……」
「……違うの……止めはあたしが……。」
再び激しく首を振り、か細く震えた声ではあったっすが、ハッキリとそう口にする樹里。
「ダメっす。兄妹同士の殺し合いなんて、この俺が許さないっす。」
「……」
「俺は……自分の手で血の繋がった……いや、魂の繋がった……双子の弟の命を奪い去ったっす……能力(ちから)に取り憑かれて、能力(ちから)に呑まれて、最終的には闇に身を堕とした愚かな弟だったっすが、あんな奴でも俺にとっては間違いなく大切な弟だったっす……。」
「……」
「俺は未だにあの時の事を後悔してるっす……何故、あの時もっと早くにあいつの変化に気付けなかったのか……何故あいつの事をもっと理解してやんなかったのか……何故……あいつと戦うって以外の選択肢を捨ててしまったのか……何故……あいつを『殺す』って以外の方法で止めてやれなかったのか……」
「栄……」
「未だにあの日の事は夢に見るっす……自分の弱さが許せないっす……今なら……今の俺なら違う方法が採れるのに……何であの時はあんなに弱かったのか……今なら……今なら!!」
「……栄……」
「……樹里にはこんな思いはして欲しくないっすよ……だからこの場は俺に任せるっす。」
「栄……有難う……でも……違うの……これはあたしがやらなきゃならないの……。」
「何でっすか?!樹里……君がホントは風陀羅を殺したくないって思ってることは、風が知らせてくれてるっす……君が風陀羅命を奪えば、君はいつまでもそれを後悔する事になるっすよ!」
「それは違うわ……殺したくないって言うのは確かだけど、このまま、栄に押しつけてしまった方が、きっとずっと後悔する事になる!……だって……」
「……だって?」
「誰よりもそれを望んでるのが……兄さんだって分かったから……。」
「っ!!」
「あたしは気付いてしまったの……あの時……兄さんにとって……風陀羅にとってそれ以上の生が苦痛でしかったんだって事を……あたしの手に……せめてあたしの手に掛かって死にたかったんだって……でも、あの時のあたしはそれに気付くことが出来なかった……只々、憎しみの果てに刃を振るうことしかできなかったの……そのくせ兄さんの命を奪う勇気もなかったあたしは、自分の命と引き替えに、兄さんを封印する事しかできなかった……それが、更なる兄さんの苦しみに繋がるとも知らず……だから……あたしがやらなきゃ……あたしじゃなきゃダメなの……。」
「それは……」
俺も、その事については察しはついていたっす……何故かまでは分からないっすが、風陀羅がホントは死にたがっている事……更には樹里……いや"樹"に討たれる事を望んでいるって事は……。
でも……
「やっぱりダメっす。それは、言ってみれば風陀羅の我が儘にすぎないっす!……人として転生した以上、これ以上過去に囚われていては……」
「有難う……栄。でもあなたは言ったわ……『兄妹』だって……。転生してもその事には変わりはない。あたしは妹として兄の意志を尊重したい……それに、やっぱり鎌鼬としての義務も果たしておきたいの。」
「樹里……」
「大丈夫……栄が居てくれるからあたしはきっと耐えられる……だから最後はあたしに任せて……咎人であるのは確かだけど……兄さんに……風陀羅に安らかな死を……」
そう言って、樹里はくるりと俺に背を向けて、その手に刃を生み出しながら風陀羅に歩み寄って行ったっす。
「兄さん……ごめんなさい……あなたの想いに気付いてあげれなくて……あなたの想いに応えてあげれなくて……あなたに更なる苦しみを与えてしまって……そして……あなたが望む『あたし』じゃなくって……。」
樹里の言葉にゆっくりと薄目をあける風陀羅……。
「謝罪の言葉は要らぬ。それは、我に課せられし罰が一つ。」
「……」
「……さらばだ、我が妹よ。」
「……さようなら……兄さん……」
そして、樹里の刃が月下に煌めき、風陀羅の身体を貫いたのだったっす……。
「有難う……樹……。」
風に流れて溶けていくその言葉は、とっても安らかなものだったって事だけは確かだったっす……。
web小説 月下の白刃⑬
俺の放った『巨人の聖鎚(トールハンマー)』をまともに喰らい、風陀羅は息も絶え絶えで倒れているっす。
命を失わずに耐え凌いだのはさすがっすが、もう戦う力が残っていないのは一目瞭然だったっす。
俺の身体もさすがにダメージが深かったっすが、『金剛壁』のお陰で致命傷には至っていないっす。右肩のダメージはまだまだっすが、残りの傷はその大部分が塞がっているっす。ただ、失われた血液までは戻る筈もなく、貧血で立っているのも辛い状況ではあるっすが。
俺はトドメを刺すべく、ナイフを握り直して風陀羅のもとへと足を進めたっす。
―ザッザッ―
風陀羅のもとまで後少し……と言うところで俺の前に立ち塞がる人影が一つ。
「樹里?……どうしたっすか?」
泣きそうな顔でこちらを見つめている樹里。
「栄……あたしのせいで……」
「樹里のせいじゃないっすよ。術者として生きている以上、これくらいは覚悟の上っす。」
「……」
「さぁ樹里……そこを退くっす。ここで止めを刺しておかなかったら、元の木阿弥っす。」
「……だめ。」
ブンブンと首を振り、俺の言葉に拒否をする樹里。
「樹里……気持ちは分かるっすが……」
「……違うの……止めはあたしが……。」
再び激しく首を振り、か細く震えた声ではあったっすが、ハッキリとそう口にする樹里。
「ダメっす。兄妹同士の殺し合いなんて、この俺が許さないっす。」
「……」
「俺は……自分の手で血の繋がった……いや、魂の繋がった……双子の弟の命を奪い去ったっす……能力(ちから)に取り憑かれて、能力(ちから)に呑まれて、最終的には闇に身を堕とした愚かな弟だったっすが、あんな奴でも俺にとっては間違いなく大切な弟だったっす……。」
「……」
「俺は未だにあの時の事を後悔してるっす……何故、あの時もっと早くにあいつの変化に気付けなかったのか……何故あいつの事をもっと理解してやんなかったのか……何故……あいつと戦うって以外の選択肢を捨ててしまったのか……何故……あいつを『殺す』って以外の方法で止めてやれなかったのか……」
「栄……」
「未だにあの日の事は夢に見るっす……自分の弱さが許せないっす……今なら……今の俺なら違う方法が採れるのに……何であの時はあんなに弱かったのか……今なら……今なら!!」
「……栄……」
「……樹里にはこんな思いはして欲しくないっすよ……だからこの場は俺に任せるっす。」
「栄……有難う……でも……違うの……これはあたしがやらなきゃならないの……。」
「何でっすか?!樹里……君がホントは風陀羅を殺したくないって思ってることは、風が知らせてくれてるっす……君が風陀羅命を奪えば、君はいつまでもそれを後悔する事になるっすよ!」
「それは違うわ……殺したくないって言うのは確かだけど、このまま、栄に押しつけてしまった方が、きっとずっと後悔する事になる!……だって……」
「……だって?」
「誰よりもそれを望んでるのが……兄さんだって分かったから……。」
「っ!!」
「あたしは気付いてしまったの……あの時……兄さんにとって……風陀羅にとってそれ以上の生が苦痛でしかったんだって事を……あたしの手に……せめてあたしの手に掛かって死にたかったんだって……でも、あの時のあたしはそれに気付くことが出来なかった……只々、憎しみの果てに刃を振るうことしかできなかったの……そのくせ兄さんの命を奪う勇気もなかったあたしは、自分の命と引き替えに、兄さんを封印する事しかできなかった……それが、更なる兄さんの苦しみに繋がるとも知らず……だから……あたしがやらなきゃ……あたしじゃなきゃダメなの……。」
「それは……」
俺も、その事については察しはついていたっす……何故かまでは分からないっすが、風陀羅がホントは死にたがっている事……更には樹里……いや"樹"に討たれる事を望んでいるって事は……。
でも……
「やっぱりダメっす。それは、言ってみれば風陀羅の我が儘にすぎないっす!……人として転生した以上、これ以上過去に囚われていては……」
「有難う……栄。でもあなたは言ったわ……『兄妹』だって……。転生してもその事には変わりはない。あたしは妹として兄の意志を尊重したい……それに、やっぱり鎌鼬としての義務も果たしておきたいの。」
「樹里……」
「大丈夫……栄が居てくれるからあたしはきっと耐えられる……だから最後はあたしに任せて……咎人であるのは確かだけど……兄さんに……風陀羅に安らかな死を……」
そう言って、樹里はくるりと俺に背を向けて、その手に刃を生み出しながら風陀羅に歩み寄って行ったっす。
「兄さん……ごめんなさい……あなたの想いに気付いてあげれなくて……あなたの想いに応えてあげれなくて……あなたに更なる苦しみを与えてしまって……そして……あなたが望む『あたし』じゃなくって……。」
樹里の言葉にゆっくりと薄目をあける風陀羅……。
「謝罪の言葉は要らぬ。それは、我に課せられし罰が一つ。」
「……」
「……さらばだ、我が妹よ。」
「……さようなら……兄さん……」
そして、樹里の刃が月下に煌めき、風陀羅の身体を貫いたのだったっす……。
「有難う……樹……。」
風に流れて溶けていくその言葉は、とっても安らかなものだったって事だけは確かだったっす……。
web小説 月下の白刃⑫
何故……何故なの?!
栄と刃を交えているはずの兄さんの視線が、幾度となくあたしの視線とぶつかっては離れていく……。
ぶつかる視線には、あの狂気じみた光はなく、何故か寂寥と哀愁を感じさせるのだ……何故なの?!
胸の奥がザワザワとざわめく……。
本当にこのまま栄に全てを押し付けてしまっていいの?と、心の中の自分にあたしはそっと囁いてみる……。
栄の言っていた事も分かる……栄があたしを心配してくれた事も嬉しい……。
でも……でも、本当にこのまま栄に全てを委ねてしまっていいの?!
本当に、これが正しい選択なの?
答えて!あたしの中のあたし!!
……兄さんと視線がぶつかるたびに、あたしを襲うこの焦燥感……兄さん……兄さんはあたしに何を言いたいの?そんな瞳であたしを見詰めて一体何を言いたいの?!あたしは何か忘れてしまっているの?
あたしは……あたしは!!
「あ……」
自問自答していたその時、兄さんの大鎌が栄の右肩を鋭く切り裂いた!
「栄ぃぃぃぃぃ!!」
あたしが栄に全てを委ねてしまったから!少なくとも、一緒に戦うって選択肢はあったじゃないの、あたし!!
……しかし、あたしの心配は杞憂に終わる。
栄は倒れる事もなく続けざまに術を繰り出し始めたのだ。
良かった……。
栄の放った一撃は、兄さんの身体を貫き……そして……その瞬間あたしと兄さんの視線は再びぶつかり合う……。
その時、兄さんの瞳から漏れた感情は……愛惜の念……。
「あ……あっ!」
その瞬間……あたしは唐突に、この場に至るまでの全ての事を理解したのだった……。
web小説 月下の白刃⑪
「母なる大地の精霊よ……我と結びし契約を礎に、床闇に沈みし汝が僕(しもべ)を我が元へ……大地讃鍾!」
そう唱えて地面に右手で触れると、俺を中心に澄んだ鐘の音が鳴り響き、地面に波紋が広がったっす。
―キィィィン―
その途端、急激に俺の周りの気圧が下がり、空から風を纏った一匹の獣が降りて来たっす!
「くっ!!」
それを何とか避ける俺と樹里。
―ズガァァァン―
半瞬前まで俺達がいたその場所には浅いクレーターが穿たれ、その中心では樹里の前世上での兄である『風の風陀羅』が、その尾を巨大な大鎌に変化させて臨戦態勢を敷いていたっす。
「樹里は離れるっす!」
―パンッ―
「砂柱槍!」
樹里に注意を促しつつ、俺は地面にパンッと右手を叩きつけて大地の精霊に働きかけたっす!
―ザシュザシュザシュッ―
「ふん……」
地面から、砂礫の錐が突き出して風陀羅に襲いかかったっすが、それを難なく避ける風陀羅。
「先ずはお前か、手下Aとやら……」
「だから!て・い・し・た・え・い!」
そう反論しながら、俺は続いて土石流を風陀羅に向かって放ったっす!
驚きの表情を浮かべる風陀羅……ワンタッチで術を繰り出した事に驚いたっすかね?
俺は、あのアストールとの戦いで、高レベルの相手と戦う上では、ほんの僅かな術の初動の差が勝負を分けると学んだっす。特に一対一で、長々と呪文の詠唱してるなんて論外っす!
そこで俺が考えた戦法が『精霊領域』と『多重詠唱法』っす。
予め精霊が活動し易い領域を作りだし、そこに五精(風水火土雷)のいずれかを流し込むって方法っす。因みに今回は、『精霊領域』の方はここに飛び込んでくる前に完成させてあるっすから、後は多重詠唱法で二種類の精霊を流し込むことができたっす。大地の精霊とあと一つ……それは後々のお楽しみっす!
激しい土と砂礫の奔流は、次第にその姿を竜に変化させながら、逃げる風陀羅を追って行ったっす。
「チッ……」
風陀羅はそれを見て逃げるのを諦め、土の竜に向かってその大鎌を振るったっす!
スパスパとチーズの様に滑らかな切断面を見せながら切り裂かれる土の竜だったっすが、切り裂かれた先から再び土石流となって、今度は四方八方風陀羅を取り囲むように舞い上がり、螺旋を描いて襲いかかったっす!
「くだらぬ!」
次の瞬間、風陀羅を中心に激しい竜巻が生み出され、土石流を巻き込みながら上空に舞い上がっていったっす!
風が治まった後には風陀羅の姿が見当たらず、その場はもぬけの殻になっていたっす。
マズいっす!激しい風の流動の影響で、風から伝わる気配の分析が上手くできないっす!
目を瞑り、風陀羅の妖気を読むことに全精力を傾ける俺……。
―ピキッ―
小さな亀裂音と共に地面から飛び出してきたのは、細い幾本かの鋭い刃……恐らくは爪を変化させたその風陀羅の刃が、下弦を描いて俺に襲いかかってきたっす!
「くっ!」
俺は、横に飛び退きながらナイフを振るって、その刃をなんとか避けようとしたっすが、完全には避けきれず、その内の一本が俺の右の腕の付け根を貫いたっす。
「く……痛…い……っすよぉぉぉぉぉ!」
―ビギギギギギィィィィィン―
「ガァァァァァ!」
俺は叫び声を上げながら、左手をこの身を貫く風陀羅の刃に当て、この場に呼び出していたもう一つの精霊……雷精に働きかけ、刃を伝わらせて風陀羅本人に激しい電撃を喰らわしたのだったっす!
今の一撃が風陀羅の居場所をこの俺に指し示してくれたっす。
俺はナイフを振るって風陀羅の刃を叩き割ると、刺さった破片を引き抜いて、すかさず風陀羅に向かって新たな術を組み上げていったっす!
「雷帝掌(インドラの矢)!」
俺の指先に集められた稲妻が、風陀羅に向かって一直線に伸びていったっす!
「……」
―ヒュン―
な!……稲妻の矢が風陀羅に届こうかというその瞬間、一直線に進むはずだったその矢があらぬ方向へと曲がって奴を通り過ぎて行ったっす!
よく見ると、奴の周りに銀色の糸状の刃が無数に走っているっす!
あれを避雷針代わりにしたっすね?いつの間に……。
「来るのが分かっていれば、雷を避けるのは容易い……」
あの一撃で……たった一撃で対策を講じれたんすか?!
驚愕からくる一瞬の間……戦闘中に何やってるっすか俺ぇぇぇぇぇ!!
慌てて精神(こころ)を建て直したっすけど、一歩遅かったっす!
「風刃乱舞……」
円に近い形状をした幾つもの小さな刃が奴の周りを取り囲み、それが幾本もの小型の竜巻と共に四方八方から同時にこちらに襲い掛かってきたっす!
その上、竜巻に巻き上げられた埃のせいで視界は最悪で、風陀羅の姿も見失ってしまったっす……。
「これは……避けられないっすね……。」
ダメージが避けられない事を悟った俺は、地面に片手を突いて、大地の精霊に呼び掛けたっす!
「金剛壁!」
地面に触れてる足先、指先から全身に流れ込む大地の精霊の精気……精気は目には見えない障壁を薄皮一枚分作りだし、更には俺の自己回復能力を最大限に高めていったっす。
激しい轟音と共に襲いかかってくる竜巻と、その竜巻の陰から死角を突いて飛んで来る刃。俺はその二つを敢えて避けずに、この身で受け止めるべく全身に力を込めたっす!
「っ!!くっ……がっ!いでっ!」
襲い掛かってくる竜巻と刃に思わず苦痛のうめき声が吐いて出るっすが、そんなことには構ってる余裕もなく、俺は次に来るはずの風陀羅の襲撃に備えたっす!
(くっ……まだっすか?!)
続けざまに竜巻と刃が俺の身体を襲い、全身を激しい痛みが貫いていくっす……。『金剛壁』のおかげで傷は浅く、その傷もすぐさま回復していくっすが、体が切り裂かれた時の痛みまでは消し去ってはくれないのだったっす。
このままじゃ、集中力が途切れて隙が出来てしまうっす!
(だぁぁぁぁぁ!!早く来るっすよぉぉぉぉぉ!!)
―ヒュン―
俺の心の叫びが届いたのか、風と刃の攻撃が途切れ、背後から風を切って斬撃音が!
「こっちっすか!!」
―ガキン―
振り向き様、両手に持った2本のナイフをクルッと回転させながら逆手に持ち変え、面前で交差させてかさ掛けに振り降ろされてきた大鎌を受け止めたっすが……
「ぐが……」
俺は、風陀羅の大鎌を受け止めきれず、その刃は俺の鎖骨を砕いて肩に食い込んでいるっす!
「栄ぃぃぃぃぃ!!」
響き渡る樹里の絶叫……でも、今の俺にはそれに応えている余裕は無いっす!
「翔雷!」
俺がそう唱えると、俺達の周りを取り囲むように、雷が地面から空に向かって何本も伸びていったっす。
風陀羅はそれを見て、咄嗟に飛び退いたっすが……それが俺の狙いっすよ!
俺は風陀羅が着地する寸前、爪先でトンッと軽く地面を鳴らしたっす!
「っ!!」
着地点が突然沼地へと変化し、既に次の動作を行うべく準備をしていた為に踏ん張りの利かないその足場に体勢を崩す風陀羅……そしてその時には既に、俺が呼び出した雷が空中で集まり、一体の巨大な雷球を作り上げていたのだったっす!
「巨人の聖鎚(トールハンマー)!!」
そして次の瞬間、雷球から一直線伸びていった黄金の槍が、風陀羅の身体を射抜いたのだったっす……。